壺中美人
作品年代:昭和29年5月25日〜昭和29年5月30日
作品場所:世田谷区成城町、江東区深川
作品粗筋:陶器蒐集の画家、井川謙造が自宅のアトリエで何者かに殺害された。殺害直後、住み込みのばあやが、支那服を着た犯人の女が身体をねじ曲げながら壺の中に入っていこうとしているのを目撃している。同時刻、アトリエ近くの路上で成城署の巡査が刺傷される。事件より一カ月ほど前、金田一耕助と等々力警部はテレビの寄席中継でこの曲芸を目撃していた……。
依頼主:前半は依頼人なし。後半、井川虎之助がいくらか謝礼をした。
成功報酬:ある金額の5%と換算して25万円。
登場人物
- 井川謙造……無名の画家で、自宅のアトリエで殺されていた。40前後という年頃で、色の浅黒いちょっとした好男子風で陶器の蒐集家だった。妻のマリ子とは別居中。井川のアトリエは「夢殿」と称していて、アトリエの北側にも扉を作り完全に母屋からシャットダウンできるようになっていた。新潟の資産家の次男で成城に3000坪の地所を持っている。サディストだった。
- 井川マリ子……謙造の二度目の妻で結婚前はキャバレーのダンサーをしていた。井川謙造のサディスト的嗜好に耐えかね、昭和28年12月24日に井川邸を飛び出した。現在は西荻窪の蘆荻荘というアパートに住んでいる。謙造とは5月24日に新宿のブルー・パゴダという喫茶店であったのが最後で、事件当夜は知り合いと麻雀をしていたという。
- 宮武たけ……井川家の住み込みのばあやで年齢は45、6歳ぐらい、1番目の妻の時代から奉公していた。事件当夜、犯人らしき支那のズボンをはいた女性が壺の中に入っていこうとしていたと証言。息子の敬一は日本橋の呉服屋「紅屋」に奉公している。
- 宮武敬一……たけの息子で日本橋の呉服屋「紅屋」の住み込み店員。事件から2日後、アトリエの北側の麦畑の入り口で翡翠の耳飾を拾った。
- 井川治子……謙造の一度目の妻。病弱で昭和27年の秋に死去。
- 楊華嬢……金田一耕助と等々力警部が見たテレビの寄席中継で壺の中に入る美人役を演じていた。日本名を花子という。神戸、三宮のヤミ市で楊祭典が拾って育てた戦災孤児。5月26日、謙造からもらったヒルマンで外出した後、行方不明。
- 楊祭典……金田一耕助と等々力警部が見たテレビの寄席中継で口上を述べていた男。中年の満月のような顔をしており、前歯に金歯を光らせている。中国名の割には歯切れのいい江戸弁をしゃべる。広東生まれて大正3年に日本に渡ってきたという。日本名は桃郎。親子とは名ばかりで現実には楊華嬢と夫婦。井川謙造に唐獅子の壺と対になる牡丹の壺を売った。事件当夜は、上野の寄席がはねてから自宅で楊華嬢の行方を電話で探しまくっていた。
- 村松さん……川崎巡査が刺された現場近くに住む厚生省に勤務している。巡査の叫び声を聞いて110番連絡した。
- 村松さんの奥さん……叫び声を聞いてから自動車の立ち去る音を聞いたと証言。
- 梶原譲次……マリ子に付き添っているウェルター級のボクサーのようなたくましい体をした男。マリ子は自分の妻だと思っている。事件当時はマリ子とともに麻雀をしていた。夜8時ごろに蘆荻荘を訪れ、そのままそこに宿泊した。ボクサーあがりで西銀座の『赤い鳥』というキャバレーの用心棒をやっている。あだ名はブルドック。
- 鈴木隆介……築地にある北川法律事務所に努めている弁護士。自宅は三鷹の都営アパート。事件当夜、マリ子とともに麻雀をしていた。夜8時ごろに蘆荻荘を訪れ、11時には帰っていったという。マリ子と井川謙造の離婚訴訟を起こさせた人物。4月8日と5月5日に井川謙造と会見している。5月19日の夕方、井川からマリ子の情夫の証拠をつかんだとの連絡を受ける。
- 秋山美代子……西銀座の『赤い鳥』で働いている女性。蘆荻荘には夜8時ごろ訪れ11時ごろに帰っていったという。
- 青田京子……成城学園駅前にある万花堂という切花屋に努めている女性。5月25日の夜8時半から9時までの間に自動車で支那服にレインコートを纏い、大きなサングラスをかけていた謎の女性がバラの切り花を買っていったと証言。
- 山藤の旦那……山本藤兵衛。横山町にある洋物屋の旦那で、色気抜きで楊華嬢をひいきしている。5月29日、交通事故でお茶の水のK病院に運ばれる。
- 井川虎之助……謙造の実兄で新潟の地主で、上京して謙造に金の融通を頼みに来たらしい。
- 村上マキ……楊祭典宅の住み込みのばあや。
- 中年の女……5月25日の晩、花村卓蔵邸裏に自動車が駐車していたの目撃した女性。目撃時刻は午後11時前後。
- 第一の目撃者……5月25日の午後9時半ごろ、ヒルマンが花村卓蔵邸裏に駐車していたのを目撃した男性。
- 第三の目撃者……5月26日午前零時半に花村卓蔵邸裏にトヨペットが駐車していたのを目撃した男性。
- 近藤重吉……日本橋『紅屋』の元番頭で、宮武敬一と関係ができて前橋の支店に左遷させられた。
- 壺……以前(昭和29年4月5日の夜)、金田一耕助と等々力警部がテレビで見た曲芸(第七チャンネル、パシフィックテレビの寄席中継)で使われていたもので、井川が執拗にねばって購入したものだった。模様は牡丹。ほかに唐獅子、鳳凰の模様の壺もある。
- 金田一耕助……名探偵。
- 等々力警部……警視庁の警部。。
- 山川警部補……成城警察署の主任で金田一耕助とは『支那扇の女』などで起訴顔なじみ。
- 志村刑事……成城警察署の刑事で金田一耕助とは『支那扇の女』などで起訴顔なじみ。
- 新井刑事……警視庁の刑事。
- 三浦刑事……成城警察署の刑事。
- 柴田刑事……成城警察署の刑事。
- 川崎巡査……成城警察署の巡査で5月25日の深夜、謎の女に下腹部を刺された。
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